「聾者(ろう者)の音楽」を視覚的に表現したアート・ドキュメンタリー、無音の58分間。
世界には音楽が溢れている。
しかしあなたのまだ知らない音楽があるとしたら── 試写の際、渡されたのは、耳栓。
そうなんです。
映画LISTENは、音の一切ない58分の音楽映画なんです。
音のない音楽映画?
えっ?
それってどういうことなの?
本作は今まで生きてきて、知らなかった世界へ。未知の扉を開けてくれる作品です。
楽器や声ではない。
手話だったり全身を使った身体表現によって、視覚的に「音楽」空間を創り出す。
映画は時々、私に知らない世界を見せてくれます。
本作では、聾者にとっての音楽の世界をアーティスティックに再現した新世界を垣間見た。
純粋にとても不思議な感覚を覚えた。
手、表情、身体のすべてを使って表現する本作の出演者は、全員聾者の方々なんです。
面白い、面白くないなどという言葉で表現できる単純な作品ではないと正直に思いました。
音がない音楽。
それはもちろん、何も「聞こえない」映画。
本作に関して、ひとつ言えるのは映画を観るスタンスが重要になる作品だということ。
はじめて触れ合うからこそ、こちらもはじめましての姿勢で、要は能動的な姿勢で見るべき作品。
受動的な気分でただ映画館の背もたれに身を任せて見ているだけでは、何も感じ取れないかもしれない。
自分の持っている感性を研ぎ澄まして、準備をして観るべき作品。
最後は、音楽を奏でる表現者たちの鼓動が聞けた気がしました。
でも、難しいと感じたところもあった。
わたしのなかの新しい世界の扉を、あけてくれた1本でした。